EPISODE 1 「痛みと出会う。痛みを許せなかった私。」
- Tomomi Masuda
- 2018年2月26日
- 読了時間: 6分
私の経験が同じ思いをされている方を少しでも勇気づけられたら、そして快方へ向かうヒントとなれば、と思い痛みの克服までの道のりを公開しています。痛みを抱える方やそのご家族様の、また医療に携わる方にとっての希望の光となれたら大変うれしく思います。
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その頃、私は憧れのヨガスクールでの仕事につき、インストラクターの養成に携われることをとてもうれしく思っていました。全てうまくいっている。これからはもっとここで経験をつんで、素敵なヨガの先生を育てていきたい。そうすることで、私は世界の調和に貢献している。心からそう思っていたのですが、痛みとの出会いは何の前触れもなく、突然やってきました。
忘れもしない2018年初夏のある日。勉強のためにヨガスクールでの講義に参加していました。ヨガに使うブロックの上に座ってノートをとっていたとき、右の下腹部にしめつけられるような痛みをが走りました。きっと、しばらくじっとしていれば大丈夫だよね?そう思おうとしましたが、痛みはさらに強くなり(恐ろしい表現ですが)刃物でさされて出血しているのかと思うようなすさまじい痛みとなりました。講義の教室からは何とか退室しましたが、その痛さに涙が止まらず、しばらく横になっていました。
「いつもと様子が違う」はっきりそう思い、同僚に肩を借りながら近くのレディースクリニックへ行きました。持病も特になく、ちょうど月経終盤だったので、何となく婦人科関連なのかなと思い受診しました。内診してもらいましたが「卵巣が少しはれていて、卵巣からの出血も多少あるようだけど、そんなに痛むのはおかしい」と言われ、その日は感染症や子宮頸がんの検査などをしていただきました。出血していて痛いのなら、休めば大丈夫だからとのことで鎮痛剤をもらってその日は終了でした。そのときは、こんなに痛みが続くとは夢にも思っていなかったので、「そうか。少し休めば前みたいに仕事ができるのね。よかった」くらい思っていました。
ところが、2週間たっても痛みはひきませんでした。寝ることはできましたが、朝「痛い・・・」と感じて目覚め、次に「どうして治らないの?意味が分からない」「仕事どうすればいいんだろう、どうしてくれるの!」という怒りや悲しみで心がいっぱいになりました。今思えば、自分自身に対してつらくあたっていたなあと思いますが、当時の私は痛みに支配され、自分をいたわることは全くできませんでした。様々な種類の痛み止めを試しましたが効かず、痛みに耐える日々でした。来る日も来る日も痛みと闘い抵抗し、特に朝の数時間は痛みがひどく、毎日泣いていました。痛いことがつらかったのではなく、痛い自分が許せなくて悔しかったのです。仕事にいけない自分を情けないと思っていました。
痛みの原因が分かれば、悲しみも収まったかもしれませんが、婦人科の検査も全て陰性。内科や消化器科、整形外科など様々な科でMRIやCT検査、内視鏡検査などをしましたが、異常なし。大学病院レベルの大きな総合病院も受診しましたが、胃薬を渡されて帰ってくる始末でした。
3週間たって、多少の違和感や痛みはあるものの仕事ができるレベルに落ち着いたので、仕事へ行くようになりました。当時は休むことに抵抗があり、仕事に対する気持ちも焦っていたので、「完全に治るまでゆっくり休もう」とは露ほども思っていませんでしたし、このまま治ってしまうだろうと楽観的でした。しかしその1か月後、あの刃物でさされているような強い痛みが戻ってきたのです。それからは、もうほとんど仕事には行けませんでした。先日かかった総合病院を再度受診し、内科や婦人科など再受診するもやはり異常・病変は見当たらず。「はい、あなたは〇〇病です。手術しましょう!」と言われた方がどんなに楽だったでしょうか。「頼む!〇〇病だと言ってくれ!!」と検査のたびに心から祈っていました。「もうお腹を切って、痛いところを切り取ってくださいお願い・・・」と願ったこともあります。私も家族も途方にくれましたが、きっと病院の先生も途方に暮れたのでしょうか。大学病院でのさらなる精査を勧められ、転院することになりました。痛みが初めに起こってから、もう4か月がたっていました。痛みが長く続けば続くほど、「働くことも家事すらもできない私は価値がない、みっともない」と思うようになっていきました。今の明るく楽観的な私からは想像できない思考でした。病が心を蝕んでいくとはこういうことか、と初めて理解できました。
治療できるならしてほしいけど、その前にこの痛みをどうにかしないと私は精神まで病んでしまう。そう思って痛みのケア専門外来であるペインクリニックがある病院を探しました。大学病院で診てもらうといっても検査はし尽しているし、何か見つかるとしたら難病や深層のガンなどなのかなあ、わたしは病気でこのまま死んでしまうのかもしれない、と本気で覚悟していました。ペインクリニックに通いながら、痛みの捉え方や考え方が変わり、痛みも変化していくことになるのですが、その頃は闇の中にただ一人でいるような気分で、自分のことも病院の先生方のことも信じられない状態でした。光がさす日がくるとはとうてい思えませんでした。痛みを認めず受け入れず、痛みを抱える自分を許さない、完璧な私しか愛そうとしない、強情で頑固な自分と深く向き合うチャンスをもらったように思います。
つくづく、人間って弱い生き物なんだなと思いました。身体の調子がよければ、ヨガの哲学について熱く語り、「自分を大切にしましょう」「自然の摂理に身を任せましょう」「心と身体はつながっていますから、日々両面の浄化をしましょう」「日常でもヨガの教えを実践しましょう」などと人に伝えていましたが、当時はヨガの教えの実践など少しもできていませんでした。それはもう、笑えるくらい真逆でした。生徒さんが当時の私を目撃したら「先生、全然ヨギーニ(ヨガをする女性)じゃないよ!もっと自分に対してアヒンサー(非暴力)でいないと!」なんて諭されてしまいそうです。「痛み・不調は心や体からのサインである」ということも学んでいたつもりになっていましたが、痛みを受け入れ痛みから学ぶという境地へ至る道は、現実にはあまりにも過酷でした。自分のこれまでの認識が浅かったことを身をもって感じ、ヨガの教えを実践することの難しさを文字通り痛感したのです。

#痛み
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